海の乙女
―――…
「まさか…本当に人魚だとはな…」
ライトは今までの経緯をマスターに説明したが、マスターは今でも信じられないような顔をしている。
さっきは本当に適当に言っただけみたいだった。
「まあな」
「ほんとお前にはなにかと驚かされる」
「で、ここからが本題なんだが…」
そう言って、ライトはカウンターに肘をついて手を組んだ。
「彼女の友達のサラって子を探してほしい」
「ほぅ…依頼ってことか…。でもまた砂漠から一粒の砂を見つけるようなことを…」
「無理を承知で依頼している。人魚の情報はほとんど出回らないからな」
人間の間では人魚は本当にいるのかどうかも曖昧な存在だ。
人魚を見たことがあるのは貴族のなかでもほんの一握りだろう。
「彼女の友達ってことはその子も人魚なんだろ?ってことは一人で身を隠してるかもしれねぇし、最悪闇市で売られてどっかの貴族さまの家に閉じ込められているかもしれねぇんだろ。そんな情報どっから取ってくりゃいいんだよ」
「だからお前にお願いしているんだ」
「…ったくしょうがねぇな。そう言われちゃやるしかねぇじゃねえか。三日待ってくれ。」
「三日で足りるのか?」
「俺を誰だと思っているんだ?」
「そうだったな。じゃあよろしく頼むぞ」
「ああ。まかせとけ」
「ただ、その報酬として…」