海の乙女
―――…
「がはは!なってやれよ」
「いやよ!誰がなるものですか」
ニックにさっきあったことを話すと大笑いしていたが、話題の当人は不機嫌そうである。
「あの容姿にしゃべり方…思い出しただけでも寒気がするわ…」
ロビンは思い出してしまったのかブルブルっと震える体を腕で包んでいた。
どうやら生理的に受け付けないようだ。
「で、明日はどうするんだ?」
「絶っっ対に行かないわ!!」
なんて言っていたのは昨日のことで…
「やあ、マイ・スイートハニー。迎えに来たよ。さあ僕の城へともに行こうではないか」
いま目の前にはモリスが立っていた。
「なんでここがわかったのよ…?」
ロビンはすごく嫌そうな顔でモリスに尋ねた。
それもそうだ。
モリスに街でばったり会わないように、わざわざ街はずれの市場に来たのに、避けていた当人が目の前に立っているのだから。
「愛の力ですよ。昨日迎えに行くとお伝えしたじゃないですか」
モリスの後ろにはこちらをチラチラ観察するように男性が建物の影からこちらを覗いていた。
どうやら監視を付けられていたみたいだ。