ダイスキが止まらない
あたしが力いっぱい袖を掴むと、一層困った顔をする。
『泰智お兄ちゃん…』
『沙恵、ごめんな。そのお願いは聞けねぇ』
袖を掴んでいた手を離された。
苦笑しながら頭を撫でられる。
全然、嬉しくない…。
意地を張って優しい手を払う。
その日から、泰智お兄ちゃんと話さなくなった。
そして―――
いつの間にか泰智お兄ちゃんは居なくなった。
「だから、いるワケない…」
「……?誰が?」
真里に不思議な顔をされた。
「ううん、何でもない」
あれは過去。
もう終わった恋。
いい加減、忘れなきゃ…
忘れなきゃ――…