最愛の君へ
『あ・あんた何してんだよ!?風邪引くだろ?』

思わず手元の傘を差し出しいづみの肩に自らのジャンバーを羽織らせた

『…』

こんな時まで彼女は無言で

半ば呆れていると

彼女の腕の中で

何かがストールを羽織り小刻みに震えている事に気付いた

『お前何もってんの?』

『あんたに関係ないじゃない!』

あ゙ー!!

これじゃ拉致があかねぇじゃねぇか…

『いいから見せろ!!傘ん中だからもぅ濡れねぇだろッ』

『ちょっ…』

彼女の腕からストールを無理矢理奪うと

そこにはまだ産まれて間もない

子犬の姿があった

『お前これどうしたの?』

『これじゃない!ちゃんと犬って言ってよ!』

『あーもぅごめんごめん!!犬どうしたんだ?』

『…』

『何?また無言?』

『キノシタニ…』

『あっ?聞こえない』

『木の下に捨てられてたの!!可哀相じゃない!!』

『あぁ…』

『分ったらさっさとどっか行ってよ。もぅ満足でしょ!!』

ホント可愛くねぇなぁ…

『ちょい子犬かせや』

『何でそうなんのよ!!』

『こんままここいいたら子犬凍え死ぬぞ。ストールだって濡れてんだから余計寒いに決まってんだろ』

『…』

『はーやーくー』
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