最愛の君へ
『温けぇ~…』

冷えきった体にゃやっぱ湯船だなぁ~

なんて親父みたいな事考えていると

首を傾げてこちらを凝視する子犬

『お前拾われてよかったなぁ~俺に感謝しろ』

そんな事を言ってると

『なんちゅー自我自賛だよバカタレ』

兄貴が風呂場のドアを開けてきた

『寝てたんじゃねぇの?』

『お前の独り言がうっさいから起きた。てかお前!この子犬ちゃんは一体何故?』

『拾ってきた』

『お前ここアパートだぞ』

『バレねぇよ』

『いつからお前はこんなに優しくなった』

『元々優しいんです』

『黙れ。子犬…かせ』

『はぁ!?何でだよ』

『いいから』

『捨てんじゃね~ぞ』

『…いいからかせ』

『約束したら渡す』

『ハァツ』

ひとつ溜め息を着いて子犬を無理矢理連れて行こうとする兄貴に

『この薄情者!!!!!!!』

『お前はゆっくり湯船につかって上がってこいよ。風邪ひくぞ?』

不敵な笑みを浮かべ去って行く兄貴は

まさに悪魔だと思った
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