2月を笑う
痴漢です。あ、もいっちょ、痴漢です。
私じゃないです。あ、もいっちょ、私じゃないです。繰り返す必要もないです。

右斜め前のおっさんが、やけに困惑した顔してるなーと思ったら、おっさんの左斜め前、私から見ると右やや斜め前(ややこしい)の女性が、やけに立ち位置を変えるんですね。こんなぎゅうぎゅう詰めなのにと、私も違和感を覚え、ふと見ると、女性の隣にいた大男が、すごい強引に女性の前に回り込んだんですよ。
しかもこの大男、目が細くてワンレンでのっぺりした顔で眼鏡をかけてるんです。大男で目が細くてワンレンでのっぺりした顔の人すみません!

大男は女性の前に立つと手をもぞもぞ動かし、あろうことか、何かぶつぶつ話しかけてるんですよ。
うおーうおーこれはもう完全に痴漢だ!頭がかっとなった私は、しかし待てよと。ここで大声出して痴漢でーすと叫んだところで、「何!?今助ける、待っていろ!」てな正義感あふれる方がいたとしても、ぎゅうぎゅう詰めで動けやしねえのではなかろうか。

となると「痴漢」と聞いても、皆が皆「あー、あそこに痴漢がいるのか…」とぼんやり思うだけで、痴漢とともに電車に揺られて終わってしまいます。そんなんどうよ。どんな一幕よ。
だからこそ女性も助けを求められないのだろうと、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでいるのだろうと、思った私はこれは是が非でも男を罰せねばと、変な正義感に燃えました。
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