2月を笑う
しかし電車が止まってからじゃあ、現行犯で逮捕は難しい。証拠になるものを提出しなければ信ぴょう性に欠けます。
手に持った鞄はぎゅうぎゅう詰めのはるかかなたに行ってしまっているので、携帯は取れない。だがしかし、コートのポケットにはiPhoneがあるではないか。撮ってやる。撮ってやるぞ、痴漢の現場を!

ひとりカーッとなった私でしたが、ポケットに手を突っ込んでは後ろの人にエルボーをくらわせ、iPhoneを取り出してはもぞもぞと周囲に迷惑をかけ、痴漢よりもはた迷惑な存在になっておりました。

で、結果。写真は当たり前ですが撮れませんでした。というか現場すら見ることができなかった。身動きできないんだもん。

で、結果。ぎゅうぎゅう詰めから解放され、どばーっと人がホームに流れ出した中に、例の大男と女性がおり、「いけるか?走らな間に合わんけど」「もーっ仕方ないわよね、行きましょう」と、睦まじくする会話が耳に入りました。

あ、ステキな旦那様ですね。お幸せに。
右手にiPhoneを、左手に変な正義感を持ち、ホームに立ちつくした瞬間でした。私は本当に、この思い込みの激しさをなんとかしたほうがいいと思います。
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