スキの魔法
「でも。これからよろしくね?」
そう言ってニッコリと笑う。その笑顔に、不覚にもときめいてしまうあたし。
「…っ」
少しして、彼があたしを解放した。あたしはすぐさま彼から離れて距離を置く。
「…あ、」
そう彼の口から零れた言葉に、思わず顔を上げる。目がガッチリ合う。
「俺ん家に住むんだから、俺の言うことは絶対ね。」
―――やっぱり最低だ…。
「…はい。」
小さな声で呟く。彼がニヤリと笑みを落とす。
すっごくイヤだけど…仕方ない。だって、これからお世話になるんだもん。
「…じゃあ、1つ目。俺に敬語を使わない事。で、名前は呼び捨てね。」
なんでっっ!!!
「イ…
「あれ?俺の言うこと、聞くんじゃなかたっけ?」
あたしの言葉を遮ってヤツは言う。
あーーっ悔しい!!!
ギュッと唇を噛みしめる。
「2つ目。朝、俺を起こしに来る事。」
「…はい、分かりました。」
「敬語なし。」
ぅぐッ!!!
「…それだけ…ッ?」
「うん。俺は、綾って呼ぶから。綾は?」
「……侑志。」
視線を逸らして微かな声で呟く。
「せ~かい。」
――――!!!!!!