スキの魔法
―――数十分後、綾が部屋に入って来た。
落ち込んで戻ってくると思っていたのに、その逆だった。
「ごめんね!侑志」
そう言って、笑っている。
「…大丈夫か?」
「何が?」
…何でそんなに笑ってる?
いつもはそんなに笑ってねえよな?
「………」
「…大丈夫だよ!!そりゃ怒られたけど…事実だしね!」
「…………」
何も言えない。でも…何か隠してる?
「これからは気をつけなきゃね。じゃぁ、あたし…部屋に戻るね。」
綾はそう言って部屋を出て行く。
扉を閉める直前、綾が笑顔で「バイバイ」と呟いた。
その“バイバイ”の意味は、翌日知る事になる。
その時俺は、妙な胸騒ぎがした。
……早く気付けば良かった。
苦しい思いさせて、ごめんな―――。