スキの魔法
「21歳になった頃かしら…2人は結婚して、子供を授かったの。とても喜んだわ。そして私も…大学で知り合った人と結婚して、妊娠したの。私達の子供が同い年の事に、2人で大喜びしたわ。本当に…幸せだった。私の方が先に妊娠してて…無事に産んだ。
でも、そんな幸せも長くは続かなかった。一志さんから子供が生まれると電話があって、私は病院に向かった。」
侑麻さんは話すのを止めて、眉間に深い皺を寄せて、唇を噛みしめている。
あたしはじっと待つ。
「病院に着くと、一志さんは泣き崩れていた。子供に何かあったのか聞いたわ。でも、一志さんは子供は無事だと言った。じゃぁどうしたのって聞いたら、さよりさんが死んだって……。嘘だと思いたかった。でも、一志さんを見てたら…現実だって、思い知らされた。
もともと、さよりさんは体が弱かったらしいの。だから……。
さよりさんは、私にそんな事一度も言った事なかった。高校の時も何もなかった。
なのに……。」
事実に衝撃を受けていると…侑麻さんの鋭い視線が突き刺さった。
「あなたが憎い。さよりさんの幸せを、人生を、奪ったから。この憎しみは消えない。
そんな私が、あなたをここに引き取ったのは…一志さんが困っていたからよ。ただそれだけ。あなたの事は嫌いだけど、一志さんが困っていたから…仕方なく。
私はあなたが憎い。今もよ。そんな人に、侑志は渡さないわ。」
侑麻さんの冷たい視線に、あたしは耐えきれなくなって逸らす。
―――初めて……知った。
お母さんが“亡くなった理由”。
お父さんはあたしに……“病気”だって言った。事実を知って、あたしが傷つく事が分かったから……嘘をついたの?
お母さんは、あたしのせいで……死んじゃったの?
あたしはお母さんの幸せを……奪ったんだ。
あたしが、お母さんを……
―――殺した。