スキの魔法
全ての用意を済ませた俺は、いつも通りに綾を迎えに部屋に向かう。
だが、そこに綾の姿がない。
開いていた窓から入って来た風が、机の上の紙の存在を知らせる。
俺は机に近寄り、紙を見た。
『ごめんね。
今までありがとう。』
たった、2行。
その2行に、綾の今までの想いが全て詰まってて。
今になって気付く。昨日の“バイバイ”の意味。
…やっぱり、何かあったんだ。
紙に涙の痕がついている。
泣きながら、この手紙を書いてる綾が頭に浮かぶ。
……早く…気付いてやれば良かった。
どうして気付けなかったんだ。
「っくそ…」
俺は家を飛び出した。