スキの魔法
「…あれ?綾華、どうした?」
そう声がして、ハッと我に返る。
「…お父さん。」
横には、侑麻さんがいた。
「何かあったか?」
「……ううん。何もないよ。もう…行くの?」
今出来る精一杯の笑顔を向けて、そう訊ねる。
「うん。」
「…そっか。気をつけてね。」
“置いて行かないで”。…なんて、言えないよ。
「じゃあね、綾華。」
「行ってらっしゃい。」
お父さんの姿を見送って、あたしは部屋へ入る。
ベッドに座ってボーッとする。
――侑志の整った顔。サラサラとした茶色の髪。綺麗で凛とした真っ直ぐな瞳。整った鼻。薄く綺麗な唇…。
全てを記憶していて、鮮明に蘇ってくる。
ドキドキと胸が鳴っている。
と同時に、胸がギュッと締め付けられる。
――何で…こんなあたしに…。
かわいくもないのに。
“興味ない”って、言ったのに。
―――これが、あたし達の出会い。
そして…はじまり。