スキの魔法



「お父さん…」





名前を呼ぶ。





「どうした?何かあったか?」





久しぶりのお父さんの声。相変わらず優しい。





「…ううん。ちょっと声が聞きたくなって」





「そうか。元気にしてるか?」





「…うん。お父さんは?」





「すごく元気だよ。そっちはどう?楽しい?」





「……うん。」





「良かったな。あっ…ごめん。仕事呼ばれたから、またな。」





お父さんが切ない声で言う。





「お父さん…」





「ん?」





「っ……頑張って、ね?」





「おぅ。綾華もな。じゃぁな。」





お父さんの嬉しそうな声が聞こえて、電話は切れた。





お父さん、今まで本当にごめんね…。





その言葉を、お父さんに言う事は出来なかった。





きっと…お父さんは、心配するから。






< 136 / 365 >

この作品をシェア

pagetop