スキの魔法
「お父さん…」
名前を呼ぶ。
「どうした?何かあったか?」
久しぶりのお父さんの声。相変わらず優しい。
「…ううん。ちょっと声が聞きたくなって」
「そうか。元気にしてるか?」
「…うん。お父さんは?」
「すごく元気だよ。そっちはどう?楽しい?」
「……うん。」
「良かったな。あっ…ごめん。仕事呼ばれたから、またな。」
お父さんが切ない声で言う。
「お父さん…」
「ん?」
「っ……頑張って、ね?」
「おぅ。綾華もな。じゃぁな。」
お父さんの嬉しそうな声が聞こえて、電話は切れた。
お父さん、今まで本当にごめんね…。
その言葉を、お父さんに言う事は出来なかった。
きっと…お父さんは、心配するから。