スキの魔法
大きな声で、あたしはハッと現実に戻る。
目の前には怒っている瞳をした侑志がいた。
「ご、ごめん…」
少し俯いてそう言うと、
「…イヤな思い出?」
と低い声で返された。
「えっ…」
びっくりして、思わず顔を上げる。
「苦しそうな顔、してたから。」
そう言って、侑志があたしの頬に優しく触れる。
「……っ…」
「…なんてな。ほら、行くぞ。」
あたしから離れて、侑志は部屋を出て行く。
ドキドキした自分が憎い。侑志は悪魔だ。最低なヤツだ。
…侑志といると、調子が狂う。どうしてだろう。
男の子に触れられて、ドキッてするなんて。
あたし……―――
そんな考えを振り払って、あたしは慌てて部屋を出た。