スキの魔法
「ありがとうございました。」
送ってくれた運転手に頭を下げる。
「いいえ。行ってらっしゃいませ。」
ニコッと笑った運転手の方にもう一度頭を下げ、先に歩いている侑志を追う。
侑志が歩く通路を皆がつくり、侑志はその道をゆっくりと歩く。
そんな人の後ろを歩くあたしは、注目の的。
あたしは視線を地面に落とす。
すると侑志が突然足を止め、あたしはぶつかる直前で足を止めた。
ぁ…危なかった…。
「おはようございます。みなさん」
キラキラの表顔を周囲にふりまく侑志。
あたしに向けた昨日の笑顔と全然違う。
これは表の顔だとすぐに分かった。
「侑志様っ!!おはようございます!!」
そう声を揃えて言う女の子に驚いた。
す…すごい。
こんなに人気のある人なんだ。
でもみんな…騙されてる。侑志の表顔に。
それにしても、キラキラと眩しいお嬢様たち。そんな場に不釣り合いのあたし。
だって…メガネかけてて、髪の色真っ黒で、2つに結んでるし。
ほんとあたしってば地味だよね…。