スキの魔法
いきなり後ろから抱きしめられて、あたしはビックリして叫んだ。
あたしの近くにいた人と、侑志が振り向く。
「キャアァアアァ!!!」
「!!?」
お嬢様方がまた黄色い声で騒ぎ出す。
侑志の時と比べれば負けるけど、でも体が震えた。
な…なに!?で、誰!!?
すると後ろからの力が抜けて、あたしの目の前に男の子が来た。
「キミが綾華チャン?俺、海堂大稀(かいどうだいき)!!よろしくねっ!!」
「………」
だ・れ?
何で、あたしの名前知ってるの?
そう思いながら、じぃ~~~っと見つめる。
侑志と変わらないくらいのスラッとしたスタイル。金色のさらさらした髪。極め付きは、ニコニコと笑うその天使みたいな笑顔。
すごくモテるのは分かる。でも、そんなのあたしにはどうでもいい。
それより…
「侑志…誰?」
男の子から視線をずらし、いつの間にか横に立っていた侑志に小声で訊ねると、
「俺の親友」
とあたしの耳元で囁いた。
侑志の親友かぁ…だからあたしの名前知ってたのかな。
「みんな急がないとおくれるよ?」
大稀くんの言葉で、皆が学校へと歩き出す。
あたしは気付かれないように溜息を落とし、皆に続いて学校へと足を進めた―――。