スキの魔法
☆1 居候の女。



「俺さ、お前の事嫌いなんだよね。」




そう言った俺に、グッと眉を顰めた綾。苦しそうに顔を歪ませている。





「…まず、“女”っていうイキモノ自体が嫌い。“かっこいいから”ってだけで、近寄ってくるし。甘えてくると鳥肌が立つ。“かっこいい”って外見だけ見て、中身なんて見ない。そんな最低なヤツ。」




フッと片方の口元を上げて冷たい瞳で笑う。





「…ッ…あたしは…っ」





「そうだな。お前はそんな“女”じゃない。でも。俺、うじうじした人間も嫌いなんだよね。いつも下ばかりを向いて、一歩踏み出す事を恐れてる奴。お前は、そんな人間。分かるか?」





綾を見れば、唇をギュッと噛みしめて涙を我慢していた。





「――分かってるっ…あたしがッ!そんな人間だって…っでも、どうすればいい、の? 人を信じるのが恐くて…逃げる事しかっ出来ないの…ッ!!」





泣き出してしまった綾。





…きっと。今まで堪えていた思いを全部吐いたんだろう。





ずっと胸の中に抱え込んできたんだろ?





そんな綾を抱きしめる。




自分の『言葉』と『行動』が矛盾している。





自分から女に触れるなんて、おかしい。





――でも、コイツには…何故か嫌だと思わない。




どうしてだろう。





そんな事を思い、1人笑みを零す。





俺の胸で泣く綾はとても細く、強い力を加えるとすぐに折れそうな気がした。




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