スキの魔法



―――放課後。




外はもう陽が落ちかけ、空が濃い青に染まってゆく。




春といっても、まだ寒い。




やっと終わった仕事。




頭がいいっていうのも楽じゃない。愛想良くしてるのも本当は嫌だ。





先生に何かとたよられて困る。でも、仮面の俺は、断らない。





教室に荷物を取りに向かう。




綾、ちゃんと帰ってるよな…。




……そういや俺、綾に言ったっけ。







なんて思いながら、教室の扉を開けた瞬間、見えた光景。





何でいるんだよ…。





小さく溜息を零しながら、綾に近寄った。





スースーと小さな寝息を立てている。





「ったく…」




呆れた声でそう呟きながら、




「綾」




と一応優しく体を揺らす。





……が、起きない。





ほんとにコイツは、俺に世話をかけるヤツだな…。





仕方ないから背中に綾を乗っけて、2人分の鞄を持ち、教室を後にした。





制服のポケットから、携帯を取り出す。





「もしもし」





「なんでしょうか?」





「迎えに来てほしい。」





「かしこまりました。今すぐ向かいます。」




ブチッ。





携帯を閉じ、門へと向かう。






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