スキの魔法
―――ガチャ。
「!?」
突然扉が開く音がして、体がビクッと跳ねる。
その方向に、おそるおそる視線を向ける。
「侑…志…?」
立っていた人物の名前を、ポツンと呟く。
そこには、真っ白なスーツを身に纏い、髪を綺麗にセットして立っている侑志の姿があった。
さすが侑志。…似合ってる。
そのオーラに耐えきれなくて、思わず視線を逸らした。
「何?俺の事、かっこいいとか思ってる?」
侑志がニヤリと笑って言うのが分かった。
「ちがっ!」
顔を上げて、あわてて反論する。いや、本当は思ったけどね…?
―――!?
一歩一歩、あたしの所へ歩いてくる侑志。
ドキドキ、加速する鼓動。
そして、あたしの耳元で…
「綾、似合ってるよ」
そう、甘く優しい声で囁かれた。
あたしの心臓がまた、ドクン、と大きな音を立てる。
……何?このドキドキ。顔の熱さ。
「あ…ありがと。」
あたしは変な感情を抑えてお礼を言った。
すると、目の前にいた侑志が、とても優しい顔で微笑んだ。
―――ドキンッ
それは、まるで王子様のようだった。
「さてと…綾お嬢様。参りましょう。」
悪戯に笑って、侑志があたしに手を差し出す。あたしはその手に、そっと手をのせる。
少し前を行く侑志の後ろ姿を見つめながら、あたしは後に続いた。