スキの魔法
教室を出て、人のいない廊下まで来ると、大稀が立ち止まる。
そして俺の腕を離して、じっと俺を見つめる。
「……んだよ」
「昨日。」
大稀が呟く。俺は眉間に皺を寄せた。
「…昨日が何?」
「綾華チャンが男の人に囲まれてた時、侑志、助けたよね?」
あー、あの事ね。
「それが?」
「いや…特には。でも侑志、綾華チャンの事…気になってんの?」
「はぁ?」
何でそうなる?
「だってさ…今までの侑志なら、女なんて放ったらかしにしてたじゃん。女を助けてる姿なんて、見た事ない。いつも、どーでもいいってカンジでさ。でも、昨日は…見つけた瞬間に侑志は動いてたよ。」
確かに…大稀の言うとおりだ。
でも、綾は同じ家に住んでる奴な訳で…。
守る義務が俺にはあると思って助けただけ。
別に、それ以上の感情なんて……。