スキの魔法
「…侑志は?」
え、侑志…?
「楽しそう?」
「よく…分からないです…。いつも周りは女子ばかりで…でも笑ってます。」
本当の自分を隠して、ツラくないのかな…。
「あの子…本当はきっと、嫌なはずよ。」
「………え」
侑麻さんは少し寂しそうに笑った。
「侑志は、女の子が嫌いなのよ。」
「……聞いた事あります。」
「そうなの?嫌いな理由は?」
侑麻さんが驚いた声を出す。
「……何となく、聞きました」
「そうなの…。侑志、あなたには心を許してるのね。」
侑麻さんが笑ってそう言った。
「…あたし、に?」
「だって、侑志の本当の顔を知ってるでしょう?」
本当の顔…意地悪な笑みを浮かべた侑志を思い出す。
「…はい」
「知ってる人は、ごく僅かなのよ。私と、大稀君と、運転手と…それからあなた。4人だけよ。」
えぇぇっっ!!?4人!?その中にあたしがいるの!!??
「私は母親だから知ってて当然。2つの顔を使い分ける事を教えたのは私だから。…大稀君は、侑志とずっと一緒にいたから心を許してるのよ。運転手はね…学校で表の顔で疲れるから息抜きの為にね。そして…あなた。あなたには心を許してるんじゃないかしら?」
侑志があたしに……?心を……?
「これからも、侑志をよろしくね。」
「あ…はい。」
「じゃぁ、失礼するわ」
「ありがとうございました。」
頭を下げると、侑麻さんはニッコリと笑って部屋を出て行った。