スキの魔法
――コンコン
「どーぞ?」
扉の向こうからあいつの声がした。大きく深呼吸をして…、
「失礼します。」
中へと足を踏み入れる。
奥へ進んで行くと、大きなソファに座っているのを見つけた。そんな彼の前に立ち、目線を合わす事なく、
「…何か用ですか?」
と訊ねた。
「…うん。何か用。」
…絶対笑ってる。顔見なくたって分かる。
「その用って何ですか?」
あたし、早くこの部屋から出たいんですけど。男と部屋で2人っきりとか…ありえない。
「うん。」
彼が立ったのが分かって、顔を上げる。
「綾華だっけ?…地味だな。」
そう言って、鼻でフンと笑われる。…何も感じないあたしの凍った心。
「あなたには…関係のない事です。」
そう呟いた。
「…そうだな。俺には関係ない。それに、お前に興味ねぇし。…でも」
その時、顎をクイッと掴まれた。