君には、絶対に…
「嘘!伊原君、絶対何かあったんだから。学校でも元気ないし、悩んでることぐらい、私には分かるんだよ?もしかして~…好きな人でも出来たんでしょ~!?」

「え…!?いや…好きな人なんていないから!」

「その動揺の仕方!いますなぁ~!?誰?」

毎日長々と話してきたせいか、雪乃ちゃんには俺の心の中が覗かれているような気がしてしまうほど、たまに俺の心理状態が見透かされてしまう時がある…。

今まで1度だって好きな人がいるなんて言ったことはない。

好きな人がいるなんて言えない。言ったら誰だっていう話になるし、適当な名前を挙げるのも危ないし、かといって本当に好きな人の名前を言うわけにもいかないんだから…。

「いないのに答えられないでしょ?つーか、今日の授業でさ―――」

“雪乃ちゃんのことが好きなんだ。”

そんな言葉は、きっと、言うべきタイミングになったら自然と言えると思う。

でも、今はそのタイミングじゃないんだっていつも思うんだ。

きっと、俺が気持ちを伝えたら、今まで築いてきたものが壊れてしまう気がするから…。
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