君には、絶対に…
「嘘！？伊原君ってバスケ部じゃなかったの！？」

あんた誰だ…？

「マジで！？あの２人を差し置いてMVPってすごくない！？」

はいはい、獲れたのなんて偶然ですよ…！

「ねぇねぇ、バスケやってたの！？これからバスケ部入らないの！？」

バスケ部なんて入らねぇよ！！

今まで話したこともなければ、関わったことすらない人達まで一斉に話しかけてくる。

もはや、誰が何を言っているのかすら分からない…。

俺が何も答えず、窓の外だけを見ているにも関わらず、質問の嵐は一向に去る気配がない…。

そんな状況に、徐々に苛立ってきて、眉間にシワを寄せながら、群がる人達の方を見た瞬間、群がる人達の隙間から、睦と将人が腕を組みながら、俺を見て笑っている光景が目に映る…。

そんな２人を見た瞬間、俺の中で、１本の太い糸が、切れることのなかった糸が無意識に切れる。

「あ～もう！！うっせぇんだよ！！お前ら、何なんだよ！！つーか、お前ら誰だよ！！話したこともねぇし、面識もねぇのに、群がってくんじゃねぇよ！！このクソミーハー共が！！マジでうぜぇ！！」

腹の底から大声を出して、ものすごい剣幕で怒鳴りつけた。

そんな自分に自分でも驚いていたけど、俺以上に驚いていたのは、もちろん、その場にいた人達だった…。

騒がしかった教室内が一瞬で静まり返り、珍獣でも見るかのような目つきで俺を眺める…。

そんな痛い視線を感じて、さっきまで流れていた汗が勢いを増して流れ始める。
< 13 / 132 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop