君には、絶対に…
「遅ぇぞ、将人!!って…あ、あれ!?み、未来(みく)先輩!?何で!?」

さっきまで怪訝な表情をしていた睦の表情が、いきなり明るく、満面の笑みに変わり、2人に駆け寄っていく。

将人が連れてきたのは、女子バスケ部でキャプテンをしている【佐藤未来】だった。

バスケ部に興味もない俺でさえ、未来先輩のことは知っている。

「先輩なんてやめてよ~!先輩なんてガラじゃないんだから!」

未来先輩も笑顔を見せながら、駆け寄っていった睦の右肩を軽く叩いていた。

未来先輩のことを知らない人は、うちの学校内にはいないかも知れない。

それぐらい、未来先輩は有名な人だと思う。

成績は部活をやっているにも関わらず、上位クラスだし、バスケは本当に巧いし、何より、両頬に笑窪を作る笑顔は本当に可愛い。

身長が160cm半ばぐらいで、ちょっと幼い顔つき、パッチリとした二重瞼で、髪は真っ黒で腰まである綺麗なストレート。

パッと見おっとりしてそうな雰囲気なんだけど、すごく活発で、バスケをやっている時は、普段と違う雰囲気があるというか…。

俺からしたら、住む世界が違う人っていう感じがする人だ。

「あー伊原君!!私のこと知ってる!?伊原君って本当にバスケ巧いよね!!」

未来先輩は、1人取り残され、ゴールの下で呆然としている俺を指差し、ものすごい勢いで走ってきて、また笑顔で俺に話しかけて来てくれた。

未来先輩と顔を合わせるのは、初めてだった。

バスケをしているところは、何度か覗いたことがあっても、話したりすることなんてなかったから。

だいたい、こんな人と話す日が来るとは思ってもいなかったから、バスケの試合とかとは違った緊張感を感じる…。
< 16 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop