君には、絶対に…
「え、あ、えーっと…先輩のことは知ってまひた!で、でも、バスケは本当に下手でふ!!」

ただ話すだけなのに、上手く喋れないなんてことは初めてだ…。

あまりに噛みすぎて、変な汗まで出てくる…。

そんな俺を見て、未来先輩は目の前ですごく笑っている。

こんなに間近で未来先輩の笑顔なんて見たことなかったから、無意識にも少し見惚れてしまう。

「先輩ってガラじゃないんだから、先輩なんてやめてよね~?未来で良いよ、未来で。てゆーか、そんなに緊張しないでよ~。もしかして、私ってそんなに怖いかな?」

未来先輩はさっきと変わらない笑顔のまま、俺の右肩を軽く叩く。

初めて話しているけど、何か親しみやすい人というか、警戒心を簡単に失くさせる人だと思う。

こういう才色兼備の人って、どこかお高く留まっていて、もっと話しづらい人だと思っていた。

だから、自分の中で作っていた未来先輩のイメージとは真逆で、すごく驚いてしまう。

でも、その反面、未来先輩がものすごくモテる人だと知っていたから、そのモテる理由っていうのを実感している気がした。

「ねぇねぇ、未来ちゃん!今日何でここに!?つーか、何で将人と一緒に来たの!?」

「ん?今日バスケやるから、一緒に行かない?って誘われて、伊原君も来るって聞いたから、会えるチャ~ンス!だと思ったから、来ることにしたの。でも、寝坊しちゃって…。ごめんね?」

俺と未来先輩のやりとりに睦が入ってきて、今度は睦が未来先輩と笑って話した。

未来先輩と話している時の睦の様子は、今までに見たことのない睦っていう感じがする。

いつもよく笑うし、冗談も言うけど、未来先輩と話している時の笑顔は、いつも見せている笑顔とは違う感じがするし、いつも以上に楽しそうに見える。

そんな睦を他所に、将人は着替えを済ませ、転がっていたボールを手に取り、黙々とシュート練習をして、ウォーミングアップを始めていた。
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