君には、絶対に…
「気楽にやろうね!洋介君!」

もう下の名前で呼ぶのかよ!

俺は未来先輩にそう言いたかったけど、未来先輩の笑顔があまりにも可愛すぎて、何も言えないまま、試合は始まった。

未来先輩とチームを組むのは、もちろん初めてで、睦と将人の2人を同時に相手にするのも初めてで…。

初めてづくしだったけど、試合が始まってみると、意外に緊張感がなくなった。

むしろ、ワクワクし始めていた。

レベルの差があることは分かっていても、やっぱり2人と試合するなんて、ものすごくワクワクする。

でも、そんな浮ついた気持ちは、ものの数分で打ち砕かれた…。

少しでも気を抜いた瞬間、どこからともなく手が飛び出てくる。

不用意にボールを下げれば、簡単に取られてしまう…。

俺をディフェンスしている将人を抜いたと思った瞬間には、もう目の前に睦の姿があって、シュートを止められてしまう…。

ただ、ここまで抑え込まれると、やる気がなくなるどころか、逆に、どんどんムキになって、俺は何度も2人に向かって行った。

その結果、24対4と、大差をつけられて、前半の5分間を終えた…。

前半の5分間、未来先輩がシュートを放つこともなければ、ボールに触れることすら、ほとんどなかった…。

それは、俺が一人相撲をしていたからだ…。

でも、どうしたら良いのか分からない…。

こんなにやりづらい試合は初めてだ。
< 19 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop