君には、絶対に…
ゆっくりと起き上がってみると、俺の目の前にあったもう1つのソファーに、未来先輩と今井さんが座っていた。

今井さんまでいるとは思っていなかったから、そこでまた驚いていると、2人はまた笑っていた。

ただ、ものすごく可愛い笑顔を見せる2人を見ていても、この時ばかりは、俺の表情は強張ったまま、変わることがなかった…。

もちろん、ドキッとはしたし、緊張もしているけど、それ以上に、今はバスケのことで頭が一杯だったから、笑う余裕なんてなかったんだ…。

自意識過剰かも知れないけど、初めて3Pを放ったけど、どこかで入るんじゃいかって思っていたんだ。

単純にリングまでの距離が少し遠くなるだけで、何か難しい動きをするわけじゃないから。

でも、実際は、全部リングで弾かれて、1本も入れることが出来なかった…。

全部リングに弾かれていたから、惜しいといえば惜しいのかも知れないけど、1年に1度しかないこの大会では、惜しいっていう結果よりも、入ったっていう結果の方が必要なんだ。

「洋介君は…無理してでも勝ちたいんだね?勝つために、今できることをしたい!違う?」

「もちろん。ただでさえ、俺は足を引っ張ってばっかりだから…。今出来ることがあるなら、それを全力でやりたいです。」

「今の洋介君の3Pには、1つだけ、大きな欠陥がある。それさえ直せれば、何とかなると思うんだけど、どうする?」

未来先輩は意地悪そうに笑いながら、俺にまたアドバイスをくれると言ってくれた。

アドバイスを聞きながら、俺は初めて会った日のことを思い出していた。

あの日も、少し笑いながら、でも、真剣な表情で、どうすれば3Pが入るようになるのか、未来先輩は真剣に教えてくれる。

俺のために、真剣に考えてくれるからこそ、俺は未来先輩の期待に応えたくなるんだ。

「―――今の洋介君の足にはきついかも知れないけど、3Pを入れるにはそこを直すしか方法はない。だから、どうするかは洋介君の―――」

「やらないと思います?」

未来先輩の話を遮って、俺が笑って話すと、未来先輩も笑いながら首を横に振った。

今の俺に出来ることはやりたい。

負けたくないし、負けるにしても悔いを残したくない。
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