君には、絶対に…
「そんなの分かんないじゃん!今井さん、可愛いからさ、頑張って告白すれば大丈夫だよ!」

「ううん…。無理だよ…。私の好きな人は…伊原君に負けないぐらいモテるし、あの人には、好きな人がいるんだろうから…。」

「え…?」

俺の淡い期待は、いとも簡単に打ち砕かれた…。

そんな都合の良い展開なんてないとは思っていたけど、現実的にないと知らされたのは、本当にショックだ…。

「勝てないよ、あんな完璧な先輩には…。可愛くて、かっこよくて、でも、優しくて、気さくで、すごくいい人で…。勝てる要素なんて、私には1つもないもん…。ここまで言えば…分かるでしょ…?」

「あ、睦…?」

よりにもよって、睦のことが好き…?

絶対に勝てない2人のうちの1人が、今井さんの好きな人…?

今井さんの話を聞いていれば、もう睦のことが好きなのは、断定出来る…。

でも、出来ることなら、違う相手であってほしかった…。

今井さんは、少し頬を赤らめ、耳まで赤くして、ゆっくりと首を縦に振った…。

その瞬間、自然と涙が出てきてしまいそうになった…。

心臓の鼓動が高鳴ってはいるけど、さっきまでの高鳴りとは違う…。

ショックという言葉では、片付けられないほどのレベルにまで達して、俺の心全体を悲しみが覆っていた…。

「でも、諦めようと思ってさ!だって、元々モテる人なのに、その人があの未来先輩のことが好きなんじゃ、このまま好きでいても、しょうがな―――」

「諦めんなよ!!まだ何も始まってねぇだろ!?」

「え…?」

自分でも驚くような言葉を口走っていた…。

本当は泣きたいぐらいショックなのに…。

初めて好きになった人が、自分の親友のことが好きなんだから…。

でも、今井さんの言葉を聞いていたら、無意識にこんな言葉が口をついて出ていた…。

俺の一言で、ものすごく重い雰囲気が流れていた…。
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