君には、絶対に…
「じゃあ、またな。今日はお疲れ。」

将人は優勝したというのに、喜んでいる様子は一切なく、どこか緊張した面持ちで、バッグから傘を取り出し、未来先輩と2人で歩いて行った。

痛みが完全に引いたわけじゃないけど、アイシングをしていたおかげで、まだ走ることは出来ないけど、地面に右足を着くことも、1人で歩くことも出来る。

だから、2人の後姿をしばらく見てから、ゆっくりと雨に打たれながら、家に向かって歩き始めた。

歩き始めてから、俺は今日の大会のことを思い出すわけでもなければ、右足の痛みを気にするわけでもなく、今井さんのことばかり考えていた。

そして、今井さんの気持ちを考えれば考えるほど、目頭が熱くなり、頭から流れてくる雨粒と共に、俺の目から大粒の涙が流れ始めていた…。

“興味ない。”

もし、俺が好きな人にそう言われたら、きっと、今井さんのように、気丈に振舞うことなんて出来なかったと思う…。

相手に涙を見せることなく、走り去ることすら、俺には出来なかっただろう…。

今まで誰かに告白とかしたことないけど、今だからこそ、今井さんの辛さは少しぐらい想像出来るんだ。

だって、俺は告白もしていないのに、好きな人にフラレたんだから…。
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