君には、絶対に…
俺が向かった先は、授業をサボる時に限って使う、とっておきの場所だった。

学校の裏手にあって、木々に囲まれているから、すごく空気が澄んでいて、視線の先には、俺の住んでいる街が見える。

運が良ければ、富士山さえ見えることがある場所なのに、意外と知られていない場所だ。

この場所の良いところは、学校のすぐ裏手だっていうのに、ものすごく静かであるということ。

耳に入ってくる音は、風で揺れた葉っぱが擦れる音だけ…。

そんな最高の場所に、俺は学校のバッグを背負い、コンビニの袋を左手で持って、松葉杖で何とかやって来た。

昨日の大雨で、地面が濡れているかと思いきや、地面はほぼ濡れていなかった。

だから、俺は松葉杖とバッグを放り投げて、そこに座り込んだ。

そして、ボーっとしながら、コンビニで買ったパンを頬張り、たまに飲み物を口に含んだ。

昨日大雨が降ったからか、今日は雲1つなく、青く晴れ渡った空だった。

こうも晴れていると、夏は終わったはずなのに、少し暑いとすら感じるほどだ。

でも、夏場と違っているのは、ちょっと冷たく心地良い風が吹くところだろう。

そんな風は気持ち良く、しばらくの間、俺の頭の中を空っぽにしてくれた。
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