元気あげます!

「もう・・・わけわかんない。じつはこの学校でいちばん楽しく過ごしてるのはこの人なんじゃないの?やだなぁ。」



不安いっぱいに千裕に連れられて2年C組の教室の前に立つとざわついた教室から担任の津田先生が出てきました。


「おはようございます。はじめまして。僕がC組の担任の津田です。さ、入って。」


千裕はじゃよろしく・・・と津田の方へひかるを押しやると、さっさとどこかへ行ってしまいました。


ひかるは、当然このあと、自己紹介をすることになり、高田室長からNGとされたことは一切言わないように気をつけてさりげなく、自分の席にたどりつくことができました。


ひかるが席に座ると、隣に座っている女の子が近付いて言いました。


「私は中沢葉子、はっぱのこだからハコって呼んでいいよ。
水口さんのことひかるって呼んでいい?」


ひかるはこういう会話が久しぶりで、新鮮に思えて笑顔で「いいよ」と答えました。

葉子は続いて、ひかるに小さな声で話します。


「ひかる、らっきーデーだよ。千裕先生にエスコートしてもらえるなんて。」



((え・・・えすこ~とって・・・。))

「千裕先生ってもしかして、女の子に絶大な人気とか?」


「絶大まではいかないと思うけど、見た目はいい方だと思うよ。なんとあれで学院長だしね。知ってるでしょ?名前でわかるよね。」


((なるほど、そういうことか。))

「何か千裕先生って問題あるの?見た目はって・・・?」


「うん。何でも細かいんだよぉ。うるさいっていうか、三崎の人だから悪口はいえないんだけどね。ここにいる生徒はいずれ三崎のどこかに就職するコが多いし。
ひかるはどこを希望してるの?」



「私は数日前からメイド見習いなの。家が貧乏だったところを救ってもらってるから、高田室長っておじいさんにしごかれてるとこ。」



「そうだったんだぁ。それで転入生なのね。でも親近感ある人でよかった。
私はスーパーとかブティックなんかの販売員にでもなれればって思って。」


「それだったら、べつに三崎でなくてもいいんじゃないの?」




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