元気あげます!

「お待たせしました。どうぞ・・・。」


「すまない、いただくよ。・・・・・ふぅ・・・うまいね。
いつもは高田に用意してもらうか、自分でやるかだからいい加減なんだけど、酒の相手ができるとは、さすが大人の女性だね。」


「いえ、こういうことはできても、お料理とか作法とか、まだまだ未熟ですので。
でも、私、千裕様のためにしっかり勉強しますから。」



「うーん・・・念のため言っておくけど、君は見かけがよくて仕事もできる男希望なんだろう?
僕はさえない汚れた白衣姿の化学教師で、親父から押し付けられた会社はとりあえずは代表ではあるけど、仕事は重役任せだからね。

期待してるんだったら、やめた方がいいよ。
こいつと結婚しようなんざ・・・。」


千裕は自分を指差して言いました。
するとかおりが首をふりながら


「理想や夢はたしかに持っていますけど、お家の中や召使いとの会話などを拝見させていただいて、千裕様はとてもお優しい方なのがわかりました。

あと・・・書斎で難しそうな本を手にとって真剣に読んでおられるお姿は、さえないなんてことは絶対ありません。
とても素敵だと思います。あ、偉そうなこと言ってすみません。」



「買いかぶりもいいとこですよ。ほんと。
((マズイな。そこまで見られていたとは・・・。ひかると同じ感想聞かされるとは思わなかったしな・・・。))
あ、ごちそうさま。そろそろ寝るから・・・おやすみ。」



千裕はかおりが、とくに悪人というふうには思えませんでした。
いったい、どういういきさつで、彼女が乗り込んできたのか?
現在まで、社長令嬢や重役の令嬢などをかなり調べてきたのに、かおりの名前や顔が上がってこないことに、千裕は頭を抱えるばかりでした。


「可能性があるとすれば・・・水商売あたりかな・・・。」


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