元気あげます!

突然、皆川が大声で屋敷に飛び込んできました。

ひかるはまた連れ戻されて軟禁されるのではないかと、千裕にしがみつきました。


「驚かせて申し訳ございません。じつは、裕文様が・・・何者かに襲われまして緊急手術を受けまして、命には別状ないとのことなんですが、会長も奥様もまだ飛行機でこちらへ向かっておられるとのことでまだ、親しい方が誰も来られていなくて。」


「それは本当なのか?おまえは、前科があるから信じがたい・・・」


「本当です。ひかるさんをさらったときは、私の母親が病気で、仕事をしないとヒマもお金ももらえないと脅されて仕方なく・・・」



「言えない事情って言ってたことね。」


「ええ。けれど、裕文様は母がゆっくり静養できるように考えて配慮してくださいました。
今、こんなときに見放すなんて・・・」



「わかったわ、私が見ます。」



「ひかるっ!」


「ごめんなさい。千裕様、お兄ちゃん。
朝、笑って出かけた裕文様を放っておけないよ。
意地っ張りだから、きっと我慢してるんだろうし・・・裕文様のお母様が来られたらもどってきますから。」


「無理するなよ。あとで、兄さんにも行ってもらうから・・・。」



ひかるは皆川といっしょに大学病院へと向かいました。




裕文の病室にひかるが入ると、ちょうど裕文が目を覚ましたところで、裕文はひかるの姿を見ると、うっすらと笑顔でつぶやきました。



「なぜここに来た? 君にとっては千裕のところへもどれるチャンスだろ。」


「そうですね。意地悪をするとしっぺ返しを食らっちゃうんです。
もう、おわかりですよね。だから、私は見に来たんです。
わ~い、ざまあみろ~って。」



「言ったな・・・。でも、君が来てくれたことで、僕は完全に人間不信に陥らなくてすみそうだ。
仕事上だけど、すごく信頼してた人物に裏切られたんだ。
利益や報酬より、人間の感情が先走るというのは怖い・・・。」


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