元気あげます!
「隆裕がいちばんバカなことをやっていたのは違いないことなんだけど、ここへ嫁いできた沙代子さんも、じつは恋人とずっとつながっていたのよ。

当時はね、政略結婚ですからね、そういうこともある家はあったのよ。

裕文がショックを受けたというあの日はね、沙代子さんの恋人が事故で亡くなった日でもあったのよ。

山岳パトロールだったかしらね。天候悪化で帰らぬ人になってしまったのよね。
でも、三崎の正妻が血相かえて行くわけにもいかないでしょう?
つらかったわよね。」



沙代子は裕文にごめんねとつぶやき、裕樹が淳裕には説明する機会があったけれど、裕文はあまりに母親をいたわり、千裕を目の敵にしていたので話す機会を逃してしまったことをわびるのでした。



「そういうことだったのか・・・。僕もバカだな。
人の話を受け入れられないように自分が凝り固まってたんだから。」


裕文は初めて母の涙の真相を知り、恨みで凝り固まっていた自分を恥じました。

琴美はまだ話を続けて


「はい、話は終わってないわよ。
ここからがこれからのことだからしっかりきいてちょうだい。

ここにいるひかるを高校卒業後、私がいったんフランスで引き取ってひかるが目指していることへの勉強とレディ修行、花嫁修業をさせます。

予定としては3年くらいを考えていますけど、目指すものによってはそれ以上かかるかもしれないわね。

これは私が光子さんから受けた恩返しだから、誰にも口出しはさせません。

それともう1つ、昨日いい知らせがきたわよ。ひかる。」


「はい?・・・いい知らせ。」



「あなたのお父さんを見つけました。
お父さんはお金をそれほど遣い込んではいなかったのよ。
あなたが受取人の保険をかけていらっしゃってね、ご自分は板金工の仕事をしていらしたわ。
そこでね、私から昨日お願いをしました。

お父様にもフランスに来ていただくようにしたの。
どう?、そうそう、お兄さんはインストラクターだったわよね。
お兄さんにもフランスに来てもらっていいわよ。
家族水入らずで会えるでしょ?」




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