元気あげます!
袋の中には小さな箱が入っていて、開けてみると、小さいながらも上品で質のいいことがわかるダイヤの指輪が入っていました。

「かわいい・・・。これって。」

同封されていたメッセージを慌てて開いてみると、


『ごめん、大事なときに側にいられなくて。
そのかわり、近いうちにフランスに行くからこの指輪をして待っていておくれ。
ひかるのことだからゴージャスなのはずっと肌身離さずしてくれないと思ったから、かわいい婚約指輪を送っておきます。

はずしたら死刑だからなっ!
移動中、くれぐれも気をつけてな。

千裕 』



千裕は結局、見送りに来ることもなく、ひかるは琴美と琴美の執事、そして皆川とともにパリの琴美の屋敷へ行くことになりました。



「ひかるちゃん、いえ、ひかる様のお世話をさせていただくことになりました。
よろしくお願いいたします。」



「皆川さんって、フランス語もお上手だったんですねぇ。すごい。
あ、ご家族の皆さんは大丈夫なんですか?」


「あ、気にかけていただいてありがとうございます。
それはもう、琴美様や千裕様によくしていただきましたから、こうやってバリバリ働けるんですよ。
ひかる様がパリの生活に慣れるまで緊張が少ない方がいいだろうからって、高田室長からたくさん任務を仰せつかっています。」


ひかるの表情が少し柔らかくなりました。
日常の語学もつめこみで習ってきたとはいえ、実践するのは初めてなので、緊張の度合いもとてつもなく大きかったのです。



琴美が大丈夫だと何度言ってくれても、飛行機内での機内食もほとんど喉を通らず、非常用だと幸恵がこっそり作ってくれた小さなおにぎりだけを何とか口に押し込んで、ミネラルウォーターで流し込むのがやっとでした。


緊張の糸もそろそろもう持たない・・・とひかるの疲労がピークに達する頃、やっとパリ郊外の琴美の屋敷へと到着しました。



玄関に入ると、琴美の執事やメイドたちが荷物をそれぞれの部屋へと運んでいきました。

ひかるは、屋敷内の中庭に新しく建築された2LDKの家に案内されました。



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