元気あげます!
ひかるはメイド服姿で、他の執事たちについて千裕の出迎えに出ました。
千裕はひかるに小声で「終わるのは何時になりそうだ?」ときくと、ひかるは「今日は10時にあがります。」と答えました。
待ってるとだけ言うと、千裕はさっさと自室の方へ歩いていってしまいました。
その少し後、執事のひとりが、運転手と話す声が聞こえました。
「千裕様は朝7時過ぎから銀行の会議に向かってから、4件他の会議だの、新しい支店だのってまわって、ほんとにお忙しい人だなぁ」
「そりゃ、今は三崎は奥様は大旦那様の看病に出てたり、旦那様も首都圏から出られない状態だろ。長男はすっかりお役所どまりで仕事できるタイプじゃないし、弟の坊っちゃんたちの中でも千裕様ほど優秀な人はいないから、自然とそうなってしまうんじゃないか?」
「そうだよなぁ。・・・そういえば、近々、淳裕ぼっちゃまがフランスから帰国されるらしいぞ。」
「そりゃ、なかなか楽しくなりそうだな。淳裕様はご陽気でみんなに気軽に話してくださるから、使用人の俺たちも親しみがあるからな。」
ひかるはクラスメイトの葉子の言葉を思い出して、淳裕とはどういう人物なのかをますます知りたくなってしまいました。
高田に挨拶をして、自室にもどったひかるはエンジのジャージー姿で千裕の書斎へ行きました。
「おぃ・・・これからやるのは体育の授業じゃないんだぞ。まだメイド服のままの方がましじゃねぇか?」
「だって・・・私服って人に見せられるような服、持ってないんですもん・・・。」
「あ・・・」
千裕は今更ながらに頭を押さえた。
((そうだよ。こいつは着の身着のままに近い状態だったんだよな・・・。金は父親に持っていかれてしまって、こちらから与えたものしか着ようがないよな。))
「ごめん、仕事にかまけて、指示が徹底できてなかった。
明日は見習い修行なしにしてもらって裕文のとこの秘書の人にきてもらうようにするから私服といいやつも見つくろってもらいなさい。」