元気あげます!

「いや、電話にひかるちゃんが出てしまうと困るんで、こちらから夕方頃かけるということでお願いします。」


「かしこまりました。でもふふふ・・・若い人の悩みって・・・当人同士は大変なんでしょうけど、いいですわね。
初々しくって、懐かしいです。」

「僕も千裕もあなたがた夫婦がうらやましい。
自分の愛する人とただ、いっしょに居たいだけなのに・・・。すみません、グチりました。」


「時代はどんどん移り変わっています。三崎で働いてるからといって時間が止まっているわけではありませんわ。
それをいちばん肌で感じておられるのは、ご両親だと私は思いますよ。

千裕様が私の部署にやってきた頃、こんなに繊細でガラスのような青年が皆の先頭にたって仕事などできるのかしらって失礼ながら思いました。

何度もつらそうな顔や今にも泣きそうな顔をしているときがありましたけど・・・手に折り紙で作られた星を握っては、深呼吸してここまでがんばってこられたのが印象的でした。」


「折り紙の星ですか・・・。最近、高田さんからその星のことをお聞きしたんですけどね、その星は千裕様が産みのお母様と孤児院で生活していたときに、ひかるさんに折ってもらったものらしいです。すてきな話じゃないですか。」


「そんなときの顔見知りだったのか・・・。」


「ひかるさんのお母様が亡くなった直後の一時預かりということで、2人が出会ったとか。
千裕様は何が何でもひかるさんの前を走らなければならなかったのです。」



「僕は千裕の母親を許したわけじゃないし、今でも僕の母の味方です。
でも、千裕のねばりと強さには感心さえしていました。
僕は家業の重みに立ち向かうことをしなかった。
できなくてあたりまえだから、無理をするやつはバカだとも思いこもうとしてた。

最近、千裕に負けないくらいの恋愛というものをしましてね。
彼女のためなら三崎まるごと自分の流れに変えられるんじゃないかって思い始めたんです。

ちょうどそこへひかるちゃんがきた。
これも縁なんでしょうね。
僕にもお力いただけますか?あなたと、あなたの味方の方々と。」



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