元気あげます！

「うちが出した広告っていうのはな、完全ひとりっきりな人募集中だ。
予定では、孤児院に声をかけて希望者がいればきてもらうはずだった。」


「えぇっ！でもどうして完全一人っきり？」


「うちのメイド、執事の仕事というのは、いうほど楽ではないことは高田が説明したよな。
家族のいる人は休日を楽しみに仕事をする傾向があるんだ。
あたりまえのことだけどな。
休日を得る権利はあって当たり前なんだが、そこをあえて曲げてお願いしたいほど、我が家は困っている。

ここだけの話だがな、夕食は俺が作った。」


「えっ、えええっ、おぉぉぉぉーーーー！だって、だって、昨日の夕食ってとてもおいしかった洋食じゃないですか。とくにあの牛の煮込みなんてもう・・・」


「そうか？なかなかわかってるじゃないか。あれはけっこうコクを出すのに苦労した一品だ。・・・あ、そっちに話がいくと困る！
それでだ、いつも俺が作るわけにもいかないんだ。
いちおう、複数の組織の代表やってるわけだしな。
本業の仕事がたまってしまって・・・。


多忙なだけではなく、クセのある人間が出入りするのも我が家の特徴でもあるんでな、普通に就職してくれたメイドは確実に３，４日もすれば出ていってしまう。
それで、しがらみが何もなくなった人間を雇えないものかということになった。」



「大変なおうちなんですねぇ・・・。でも、どうして・・・うちの父が私を置いて出ていってしまうんですか？」


「・・・・・」



ひかるは父親が必ず元気になって仕事復帰するといったことを信じていただけに、千裕の言葉をすぐに信じることもできず、不安な顔をしたまま固まってしまいました。


「仕事復帰はすぐにはしないと思う。おまえの父親は今頃、ハワイかグアムあたりで羽をのばしているかもしれんな。」


「そんなことあるわけ・・ありません！」


「おまえを採用するかわりに、とりあえず３億円渡してある。
残りの金はおまえの働き方次第ではあるが・・・１年続けば３億、５年以上勤続年数を超えれば１０億振り込む契約をした。」