元気あげます!
中庭から校舎に入ったところの階段で分かれて、ひかるは階段を昇り始めると・・・
「年下の彼氏ができたのかい?」
はっ・・・とひかるが振り向くと、冷たい表情の千裕が後ろに迫っていました。
「彼氏じゃありません!この前、助けてもらったから話をしてみたいって言われただけです。
本当です。」
「・・・・・くっ・・・くくく・・。誰もウソだろなんていってないって。
じゃあな。」
千裕は笑いながらひかるを追い越して、行ってしまいました。
ひかるは真っ赤な顔をして立ち止まっていましたが、思わず、「もう!」と声をあげていました。
((怒ってるのかと思ってたのに・・・何よ、あれ。))
けれど、なぜか心の中のつかえていたものはスッとなくなった気がしました。
怒ってない・・・。
もしかしたら、私の気持ちを尊重してくれているのかもしれない・・・。
((見守っていただけるだけで十分です。そう思うことにしよう。))
その日は出勤すると、三浦のプレゼンに関する資料すべてを読まされて、会議の進行表のようなものもひかるに渡されました。
「えっ、これすべて、私が用意するんですか?」
「そうだよ。庶務のコがよくやってくれるような仕事だし、1つ1つは雑用です。
出席者の名前や地位などに目を向けないで、自分の仕事に集中すれば、簡単すぎるくらいの仕事だと思いますよ。
もしかして、水口さんってあがり症とか?」
「い、いえ。」
「学生終わったら、社会人でしょう。いい経験になると思ったんですけどね。」
「あ・・・((三浦さんは、わざと滅多にできない経験だから、私にさせてくれようとしてるんだ。これからまたどんな職につくとも限らないし、スキルアップのためにもがんばらなきゃ。あまえてなんていられない!))
私、がんばります!正直なところ、会社というところも、プレゼンも想像がつかないくらい知らない世界なので、とても不安ですけど、せっかく三浦さんが私にチャンスをくださるんですから、それにこたえたいと思います。」
「よく、言ったね。かっこよくやろうとかうまくすすめようとか、ぜんぜん思わなくていいから、君の自然体でやってみなさい。」