恋愛至上主義
春と言ってもまだ、夜は肌寒い。
ジャケットから覗く首筋が少々
堪える。明日からは、ストール
を常備しようと思っていると、
マンションのエントランスに
人影が見えた。

「圭祐…」

私がつぶやくと、その声が
聞こえたのかのように圭祐は
こちらを向いた。

「希!会いたかった!」

私の姿を捉えると、すかさず
近寄ってきて、抱きしめられた。

「どうして、連絡してくれなかった
んだよ。心配したんだぞ。」

抱きしめられた私は何が起きているのか
理解できず、直立姿勢のまま動きが
止まった。

なんで?どうして、圭祐がここにいるの?

私は働かない頭で、必死に考えようと
した。
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