ルージュの森の魔女
『当たり前よ。貯めたお金で冬支度の準備に必要な物を買い揃えなきゃならないんだから』

『……お前が冬支度をする必要があるのか？』

黒猫の使い魔――クロードの最もな質問に、アリーナは口をつむぎ言い澱む。

『…ふ、冬になったら当分人里降りないし、食糧を買いだめする必要があるでしょ！』

フンｯとわざとらしくそっぽを向く主人に、クロードは呆れを通り越し本日二度目の溜め息をついた。

――まったく…、相変わらずうちの主人は庶民染みた性格をしているなぁ。

彼女ほどの実力があれば、何も食糧を買い込まなくとも豪勢な暮らしができるというのに、欲というものが一切ないのか、はたまた別の理由があるのかアリーナは人が入らないような深い森でひっそりと一人暮らしをしていた。

まぁ、そんなとこが好きで長年相棒をやっているのだが……あの、何週間も渡って行われる地道な薬草取りだけは勘弁願いたい。

そんなクロードの気持ちを知ってか知らずか、アリーナは活き活きとした表情で今度の薬に必要な薬草の名前を上げ連ねているのだった。





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