ルージュの森の魔女


「……くっ!こんだけ多いと埒があかないなっ」

一方、ジンは得意の火の魔術も交えながら敵をなぎ倒すも次から次へと来る魔物に少々苦戦を強いられていた。
そこへさらに今まで黙って控えていたフードの男の片割れが襲いかかってくる。
「ぉわ!?お前あぶねーだろ!いきなり参戦してくるんじゃねェ!!」

敵に何を言っても無駄なのだがそれでも無言の男に、ジンは軽く違和感を感じた。
――なんだ?こいつ…… まるで人形みたいな奴だぜ

目の前の敵に不思議な感情を抱きつつも、ジンは相手の隙をつき留めをさそうと大剣を振り上げる。

そこへ、ルイスの鋭い声音が響いた。

「…ジン!待ちなさい!この者たち、操られてますっ」

ルイスの声にジンは慌てて剣を止めた。
しかしすかさず機転をきかせ剣で相手のフードを切り裂くと、月光に照らし出され虚ろな瞳の男が露になる。


「まさか、その珠…。人を操ることもできるのね?」


後ろの方で黙ってなり行きを見ていたアリーナが瞳を細め呟いた。
ちなみに魔物はというとアリーナに襲いかかるまえに黒豹に変化したクロードが全て倒してくれている。

フードの男はニヤリと不気味に笑うとアリーナの問いに答えた。

「…ふふ、その通り。これは魔物だけでなく人間も操ることができるのだ」

男の言葉にジンは不快感を露にして怒鳴る。

「ふざけんな!人を何だと思ってんだ!…そんな珠、俺が壊してやる――ファイヤー・ボール!!」

「――ちょっ!待ちなさ…」

アリーナの制止も聞かず、ジンの放った無数の火の魂はフードの男に襲いかかった。

――が、案の定前もって男が張っておいたバリアに術はあっけなく弾きかえされてしまう。


そして、運の悪いことに弾きかえされた火の魂は威力を保ったままアリーナの家へと突っ込んでいったのだった。

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