ルージュの森の魔女


「――イヤぁぁ!!私の家がぁぁぁ!!!」




ドゴ―――――ンッ!!という豪快な爆発音とともに悲痛な叫び声が森全体に響き渡る。

無惨にも跡形もなく吹き飛ばされた家に誰しも唖然とした表情で息を飲んだ。






「せっかく買ったヤクのお肉がぁぁ――!!」


「心配するとこそこかよ!!」


少々ずれたアリーナの発言にクロードがすかさず突っ込む。

こいつらこういう性格だったっけ?……と後の三人が思ったことはここだけの秘密にしておこう。
なにより、家が破壊されたことにまたアリーナがブチ切れないか、そっちの方が心配だった……。




「ちょっと私の食材どーしてくれんのよ!」

案の定、アリーナはキッとした表情でフードの男を睨み付ける。

「――っな!?食べ物くらい何だっていうんだ!」

男はあまりの眼光の鋭さに少々怯みながらもしっかり反論した。

――しかし……


「うるさい!!美味しい食べ物に罪はないのよ!!!」

と、あっけなく一蹴されたのだった。


「くぅぅ…小娘のくせに言わせておけばっ…!僕たちよ奴らを残らず食い尽くすのだ!」

男の命令に再び魔物たちがアリーナたちに襲いかかる。
しかし、アリーナは不敵に微笑むとすっと両手を上にあげた。

「ふん、あなたも馬鹿ね。私を誰だと思ってるの?闇の魔術は辺りが闇に染まるほど効果が絶大なのよ!――ダーク・ブレスト!!」

アリーナが叫ぶと同時に頭上にかざした手のひらに紫色の光を放つ魔方陣が浮かび上がった。
それを見て男は思わず声を荒げる。

「――っな!延唱無しの高等魔術だとっ!?」


ま、まさか!と呟くより早く、無数の見えない刃が的確に魔物たちを切り裂いていった。

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