ルージュの森の魔女
第2章 帝都ベルクハーゲン

辺りは闇に包まれ灯籠の火が、氷のような冷たさをもった薄暗い大広間を怪しく彩る。
誰もいない不気味な静けさをもったそこは外界と隔てられたような異質な雰囲気を漂わせていた。

中央には大理石でできた荘厳な玉座があり、そこには顔の右側に銀色の仮面をつけた一人の青年が座している。
その青年は長い金糸のような髪を冷たい大理石の上に流し、金の刺繍を施した白い長衣を身に付けていた。
人間離れしたその美貌はその場にそぐわぬような神々しさをまとい圧倒的存在感を放っている。

青年は金色の瞳で誰もいない大広間を眺めていると、そこにどこからともなく一人の人物が現れた。
音もなく突如現れた来客に青年は驚くこともなく釈然とした態度で微笑む。

「――それで、どうだった?」



「どうもこうもねーよ。やっぱザコはザコだった」

不機嫌そうにいい放つ少年に青年はくすりと笑う。
その拍子にサラサラと金色の髪が白い頬に落ちた。

「しかも、あのクズ野郎ライアスが開発した妖媚珠壊しちまうわ帝国軍の奴等には嗅ぎ付けられるわで、いても邪魔だから殺っちまったぜ?」

少しも悪びれずピンク色の髪をガシガシとかく少年に美貌の青年はさらに笑みを深める。

「…ふふ、ご苦労様。それで、彼女は元気にしてた?」

唐突な質問に少年は赤い瞳を丸くするも、すぐに剣呑な光り宿しそっぽを向いた。

「ああ、あの黒髪の魔女?あの女最後まで俺のこと睨んでたぜ?クズのペット(魔物)も一瞬で全滅させるし……。ただもんじゃないね、あの女は」

< 36 / 54 >

この作品をシェア

pagetop