オルゴール 〜科学者と未確認生物〜

行ってきます。
僕は家を出た。家の鍵は開けっ放しだ。

仕事場まで空を飛ぶ最新車で急いだ。

仕事場につくと、沢山の人々が僕を見て挨拶をしてきた。皆、勘違いしてる。今の僕はいつもの理性と知識に溢れた僕じゃないんだよ。もういつもの僕じゃない。いや、これが本当の僕。
僕はみんなに挨拶した。優しく笑顔で、情熱的で子供っぽい素振りで。
大きな荷物を持って。

スペースシャトルが1000機ほど並んである部屋に入った時、背後から声が聞こえた。
『レイ！』

誰だろう。
思い出した。昨日の晩、パーティーしたときに話しかけてきた３つ年下の少女だ。
『やぁ。君は…、たしか昨日の晩…』

『そうよ！昨日の晩、あなたの家のパーティーで。』
この少女は凄く元気がいい。最後に名前だけでも聞いとくか。
『君、名前は？』

『アリスよ。それより…』

『かわいい名前だね。それじゃっ』
僕はアリスの話をさえぎり、スペースシャトルへ乗り込んだ。話している暇はない。僕は今興奮してるんだ。

シャトルをひとりで操縦しようとしてる馬鹿面な僕にアリスがまた無邪気に話しかけた。
『旅行へ行くのね？私も行っても良…』

『駄目だ。』
話をさえぎった。そしてもう二度と話しかけるなっというような目でアリスを睨んだ。可哀想だが、生半可な気持ちじゃない。
不思議の国のアリスにそっくりなアリス…。
あの服はコスプレだろうか、それとも、

まあ、それはどうでもいい。
僕はシャトルの出入り口にある頑丈で重そうな扉をゆっくり閉じた。

さぁ…僕はもうひとりだぞ。
もう誰にも会うことは無いだろう。少なくとも宇宙お化けを捕まえるまでは。
今回僕はひとりでシャトルを操縦するつもり。そういえば一人で操縦するのは初めてだ。
何回か宇宙へ行ったが、その時は８人とか、１３人とか複数の人達をつれて行った。
ひとりは初めて。本当に。
そんなことを考えてると、いきなりなんともいえない不安感や恐怖感が襲ってきた。
だけどもう行くって決めたんだ。