本当に愛おしい君の唇
「じゃあ飲めよ」


「ありがとう」


 直美が礼を言い、ペットボトルのキャップを捻り開け、口を付ける。


 治登が上着を一枚羽織って、


「まだ冷え込むよな?」


 と目の前にいる半裸のパートナーに聞いてみる。


「ええ。少し寒いわ」


「気温の差が激しいから、気を付けろよ。風邪でも引くとまずいし」


「うん、分かってる」


 直美は実に賢明だ。


 治登が思っていた以上に賢い。


 彼女はそれこそ、学歴や職歴などでは治登らのような起業家や高給取りのサラリーマンなどには劣るのだが、頭はいいようだ。

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