本当に愛おしい君の唇
 常に冷静に物事を見つめている。


 治登はいつも思っていた。


「うちの会社にはろくな社員がいないよな」と。


 確かに人事で古賀原や石松、西などまるで役に立たない連中は全て地方に飛ばしてしまった。


 特に古賀原などは二度と戻ってこられないような僻地へと追いやってしまっている。


 もう二度とあの男の顔を見ることはないだろうと思われた。


 それに治登は四月の中旬から下旬、遅くともゴールデンウイーク明けまでには、他社から優秀な社員をヘッドハンティングするつもりでいる。
 

 つまり昔のルーデルを完全に別のものとするのだ。


 これが実に刷新なのだった。


 改革しないとただでさえ溜まる社債(しゃさい)がどんどん増えていく。


 借金が増えるというのは喜ばしいことじゃない。


 確かに金を借りないと運転資金が回らないというのが現状なのだが……。
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