本当に愛おしい君の唇
「ああ」


「治登さんは大会社のルーデル背負ってるから、大変だろうとは思うけど、頑張ってね」


「うん。自分なりにいろいろやってるからさ。専務職だから、きついんだけど」


「あたしは夜のお相手だけ?」


「そんなことない。逆に俺は君がいないとノイローゼになっちまう」


「そんなに普段から疲れてるのね?」


「そうだね。だけど女房とも別れるつもりだし、いずれは君と一緒になれると思うから」


「じゃあ、未来は明るいわね」


「うん。そう思ってるよ」


 笑顔を見せ合いながら、治登と直美は手荷物を整えて、部屋出入り口へと歩いていく。


 互いに成熟した者同士なので、付き合い方も心得ている。


 治登は彼女を先に歩かせ、後から自分が付いていく。


 やはり女性の方が先だ。
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