本当に愛おしい君の唇
第3章
    3
 新宿の目抜き通りにバルベールがある。


 治登がタクシードライバーに、


「あ、君。ここだよ」


 と言うと、運転手が、


「ああ、すみません。ちょっと老眼が入ってるもんで」


 と返し、車を停めた。


 メーターを止め、


「四千五百五十円になります」


 と言う。


 治登が財布から万札を一枚取り出し、


「お釣りはいいから」


 と言って、開いてもらった後部座席のドアから外へと出た。
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